心理学授業のレジュメ

学生向けのページです。共立女子大学の「心理学」の本年度授業内容のレジュメです。 2019年度向けに修正しました。  

――イントロダクション いくつかの知見――

  • 愛情がなければ生きていけない?

 

 子供たちを2群に分けて、最初の26週は同じ食事が与えられたが、A孤児院の子供は親切な愛情に満ちた寮母の世話を受け、厳しい寮母のいるB孤児院の子供よりも体重の増加が大であった。その後、B孤児院の厳しい寮母はA孤児院に移った…..。

  • 欠如性小人症dprivation dwarfism
  • 情動の覚醒をつかさどる視床下部は(成長ホルモンを分泌させる)脳下垂体を刺激する。
  • 孤独と病気

 

2.「電気椅子に知らない人を座らせて、電気ショックを与えなさい」という命令にあなたはいつでも従う?!

 

 ミルグラムmilgram,S.の実験では、被験者の研究の目的は記憶に対する罰の効果を調べることだと告げられた。各被験者は「教師」となり、「学習者」がミスをすれば実験者の指示に従って罰を与えなければならない。罰は15ボルト(軽度)から450ボルト(危険)の電気ショック。

 精神科医は300ボルトまで罰を与えるのは4%で、450ボルトまで与えるの0.1%の異常な人間だけだと予想したが…..。

  • 状況の持っている力

(a)個人の行動に対して責任を持つ権力者 (b)犠牲者が物理的に遠くにいる (c)規則に支配された下位の役割の受容 (d)個人的価値や信念よりも社会体制に合わせる傾向

被験者が権力者の命令に対して従順になるようにしたのはだれか?

 

  1. 脳刺激で怒りは発するものだろうか?

 暴力で病院や監獄につながれた人々の研究で、側頭葉に腫瘍がある場合があることがわかった。臨床形としてあるということは分かったが、これでは因果関係の説明にならない。そこでねずみの実験…

 75匹のラットに外科的に電極を埋め込む。あるものには側頭葉に、あるものにはその他の部位に。手術から回復した後に、30匹は統制群として刺激を与えず、残りは実験群に割り当てられ、電気刺激を受けた。

 統制群は攻撃が見られない。実験群は痙攣発作が見られ、側頭葉を刺激されたラットは攻撃行動が増えた。その他の部分を刺激されたラットは攻撃性は示さなかった。

 

  1. 内気なのはどれだけ普通なのか?治すことは出来るのか?

 問題を基本的に理解しない限り、行動を変える方法を開発できない。内気の経験、頻度、原因、結果等を調べる。そのようにして得た知識を実際の問題に適応する。

 内気な人は他者の否定的な評価に関する不快な着想に過剰の自覚し、囚われる。内気な人はそれを好ましくない個人的な問題であると捉えている。内気は年齢に関係なく始まり、一生持続する。単に社会生活を疎外するだけでなく、記憶を疎外し、性的な喜びを制限し、就業の機会を制限する。

  • 治すには?

 社会技能訓練、弛緩と不安の制御、低い自尊心を高める、内気の要因は個人の中だろうか、状況だろうか?

 

 

 

  1. 物語の記憶はあなたがどの人物に自分を同一視したかによって異なってくるのか?

 3人の登場人物、広告業者と水上スキーヤーとモーターボート運転士

 a.これらの人々の4頁の物語を読ませる。 b.無関係な課題を20分やらせる。 c.物語の事実に関する90項目の再認テスト ただし、被験者の半分はスキーヤーの、残りは運転士のプロローグを読ませてある。

 「スキーヤーはハンドルに手を伸ばしたが、それにつかまることはできなかった」○

 「スキーヤーはハンドルに手を伸ばしたが、彼はそれにつかまれるほど速くはなかった」×

 「スキーヤーはハンドルに手を伸ばしたが、彼がそれをつかめるほどボートが近づいていなかった」×

 

――人間性のモデル――

 

  1. 精神力動的モデル

 全ての行動は強力な内的力により駆り立てられり、動機づけられる。フロイドFreud,S.の精神分析学では、自己保存の生物学的動機と生得的本能が行動が誘導されると仮定する。性的・攻撃的衝動は社会により禁じられてしまう。私たちは衝動と親から受けたしつけの経験に左右されながら、この基本的な葛藤を合理的に処理、防衛しながら生き延びていると考える。

 

  1. 行動主義的モデル

 データを物理的な作用の中に、具体的な世界の中に求める。視点は「行動」にあてられ、「人間」にはあてられない。刺激と反応(S→R)の流れを見る。

 

  1. 認知的モデル

 刺激と反応に左右されるだけではない、情報生成体としての人間を見る。(S→O→R)

 

  1. 人間学的モデル

 研究のためというより、研究はどうあるべきかという考え方。人間は良いもので、能動的で、成長のためにもがいて、自己実現の可能性を求める。

 対象として切り離して部分に分解して(動機や特性やに)人間を見るのではなく、全体的人間を捉える。

 

――条件づけと学習――

 生命を維持するためには、どの生体も学習する能力がなければならない。

  • 環境の中で何と何が関係しあうのか。
  • 自分の行為が外界の刺激事象にどのように作用を及ぼし、逆にどのような影響を受けるのか。

 

<レスポンデント条件づけ>

パブロフの犬の実験

無条件刺激(UCS、US)に必ず先立つ中性刺激は、反応を誘発するようになる。

無条件反応(UCR、UR)→条件反応(CR)

 さらには、刺激般化 弁別 

 消去   自発的回復   高次条件づけ   実験神経症 

 

<試行錯誤学習>

ソーンダイクの問題箱の猫

効果の法則(成功の後に続く満足感が、そのような反応次の機会にも出しやすくする)

行動は誘導されるというより、自発する。

強化子 

強化の対象となった反応に対してある適当な時間間隔を持って提示した時に、その反応の強さを増したり反応を維持することができる刺激事象を言う。「満足」という動因とは関係していない。

 

<オペラント条件付け>

B.F.スキナー

観察しうる行動についてのみ学習の記述が可能であり、そして学習はそう記述されるべきであると、彼は言う。

個々の反応の生起を測定しているというよりは、むしろ反応の割合を問題にしている。

オペラント条件づけは、反応が強化刺激に伴われればその反応の生起確率が次の機会に増大することを強調する。

弁別刺激 二次性(条件性)強化子

オペラント条件づけの随伴性

 

部分強化と間歇強化スケジュール(定率、変率、定間隔、変間隔)

条件性強化子は、強化子に匹敵するだけの力を持ち、自分で制御することは自己行動の変容のための有効な手段となる。

 

 

――人間の行動パターンを変えること――

 強化を受けるのはすでに自発された反応に対してであるから、初めての反応を引き出すために工夫をする必要がある。それは・・

  • 動機づけを高める  2.抑制を弱める  3.環境を組織化する  4.強制する  

5.モデルを提示する 6.指示を与える 7.試行錯誤を導入する

 

 <シェイピング>

 求めている特定の行動に接近するように、行動の要素を選択的に強化し、新しい行動を作り出すオペラント条件付けの方法

 <逐次接近> 目標反応に近似した行動の要素を強化する技術

 <行動連鎖> 集積された反応に順序をつけるためにオペラント技法。連鎖のそれぞれの輪を次に続く反応への<弁別刺激>にし、同時に後続する反応への条件性強化子とする。

 

<逃避>および<回避条件付け>は負の強化によるものである。そこでは、被験者が望ましい反応をしたなら、嫌悪刺激が停止するか、避けられる。

<恐怖>とは強力な条件性強化刺激である。

<学習性無力感> 環境を克服することについての無力感が全般的な反応性の欠如につながる。

 

<罰>は、負の強化とは別のもの。望ましくない反応の生起を減らす目的で嫌悪刺激が与えられる。

 

 <社会的学習理論> アルバート・バンデューラとニール・ミラー

 人間における学習の多くはモデルの行動を観察することに基づく代理性のものだ。

 

 注意過程→保持過程→運動再生過程→動機づけ過程

 

 環境決定論から相互決定論へ

 認知的な行動の修正  ABC訓練法 

<自己規制>自己観察、環境設計、行動計画に対して自らの統制を及ぼす。

 

<自己効力感> 環境からの要請に自分が対処する能力についての自信である。もっとも重要な行動決定因。それは新たな学習場面に般化していく。

 

トイレットトレーニング

――人間の行動パターンを変えること 2――

 現代心理学は認知の過程を重視する。認知過程は刺激と反応の間に介在するものである。(効果の法則は控えめになる)

 

<情報処理理論>

 情報の入力とそれに対する個人の反応との間に生ずる認知的活動や内部状態の分析のための方法論

 

多重処理機構(入出力機構、情報貯蔵機構、処理機構)

 

プログラム制御 概念推進型制御 データ推進型制御 

 

<サイバネティックス> 

機械と生命システムにおける。フィードバック制御とコミュニケーションの学問である。

 

<フィードバック>

1.反応の結果 2.反応に適切さに応じた生または負の強化 3.予測可能で制御可能なものにするのを助ける(動機を与える)。

 

情報量はビットにより計算される。

<ビット>可能性が等しい二つの選択肢を識別するのに必要な情報の量

 

<冗長度>と<エントロピー>

 

コンピュータ・シュミレーション → 人工知能

<プロトコル> 問題解決の過程で使用されるステップを記録したもの。

 

<ハードウェア>(コンピュータ機構、神経系)と<ソフトウェア>(そのシステムに与えられる指令の集合)

 

 

――記憶――

知識が符号化され、貯蔵され、保持され、検索される過程について。

 

<感覚情報貯蔵>知覚し、想起し、判断する間だけ

パターン認識(細かな特徴に分割されてから、記憶されているパターンと比較される)

注意の配分(いくつかの事柄を同時に、通常と同じ速さ、理解度、正確さでやってのけることができる)

 

<短期記憶>30秒以下 5~7の情報 意味よりも音によるエコーのように貯蔵される。

リハーサル、視覚イメージ化

 短期記憶の検索 

<悉皆型走査と自動停止型走査>1から6個の数字を見せ、その後一つの数字を見せて、最初の数字の中にあったかどうかを示す。「ある」場合も「ない」場合も同じ反応時間

 

<長期記憶>

意味処理され、処理水準が深まるほど記憶に残る。検索は難しく、構成的、推量的過程が行き過ぎると<ゆがみ>が起こる。

<処理水準>

ある情報を再構成したり、長期記憶のそれまでの文脈に結び付けて処理水準を深める。

 

<エピソード記憶><意味記憶>

<文脈>

ある事実を思い出すのに、そのときの状態、文脈を再生できればそれが手がかりになる。

<状態依存学習>

 

情報の活用のために短期記憶を長期記憶へと<転送>される。ある項目が干渉なしに短期記憶にとどまっていられればいられるほど、長期記憶に転送される。

 

<海馬>

短期記憶から長期記憶に変換さえる過程に関与。

 

情報は、量が少ないほど、新しいほど、積極的にリハーサルするほど、意味が大きく、重大なほど長期記憶になりうる。

 

<再生と再認>

再生は、学習したものを再現すること。再認は以前に経験した事柄を認識する能力であり、再生過程の一部。

再生できないのは貯蔵の失敗か検索の失敗、再認では検索は問題ではなく、単に適当な場所に情報を貯蔵しなかったのだ。

 

<(記憶)痕跡自然崩壊理論と干渉理論>

学習すると脳に何らかの痕跡が残る。それ以上使われないと自然に消える。繰り返しリハーサルをすべき(痕跡自然崩壊理論)。

何か新しいことが起こると忘却する(干渉理論)。

 

<逆向抑制と順向抑制>

 

<競合と学習解除>

 

研究法 

<対連合学習法>

対になっている単語の対を学習した後に対の一方が提示され、もう一方を再生しなければならない。

<系列学習法>

順番にならんだ個々の項目を覚えるという方法

 

<系列内位置効果>

最初と最後はよく覚えてる。

 

物語は、こまごまとした情報が結びついた記憶と忘却は、より生産的で、忘却には<抑圧>や個人的バイアスが関連する。

 

<ツァイガルニク効果>K,レヴィン

完了前の方が完了後よりもよく再生できる。しかし、自我関与的で自尊心を傷つけるとツァイガルニク効果は逆転する。

動機付けにより記憶が促進されたり抑圧されたりする。

 

記憶力は<過剰学習><概観、質問、読み、暗唱、復習>といった勉強方法によって増進する。

さらに<チャンキング>を行えば学習すべき単位の数を減らすことができる。

<チャンク>7±2

 

視覚イメージ法は記憶術法の一つで、物語連鎖法、場所なぞらえ法のような記憶術法の基礎になる。

<直感像記憶>はそれほど有用ではない。

 

――動機づけと情動――

動機は、人や生体の中から生じると仮定される行動の原因であり、刺激と反応を結びつける媒介変数と考えられる。

 

動機づけの概念は、

  • 行動の個人差説明するため
  • 外部行動から内部状態を推定するため、
  • 行動に指示を与える内部要因を説明するため、
  • 行動の責任を認定するため、
  • 行動の遺伝学的、生物学的要因の役割を明らかにするため、

に使われる。

 

<ホメオスタシス>

性を除く生物学的動因は内部平衡を維持するのを助ける調節機構として働く。

 

摂食の<完了反応>は<飢餓動因>を低減したり、一時的に除去したりする。このような行動は<飽和>が生じると終了したり、ほとんど生起しなくなる。<道具的反応>の生起率は、動機づけが高まるにつれ上昇し、低減すると減少する。

 

<食物摂取制御の血糖水準説>

血液中のグルコース値が食物摂取を調節すると仮定するものである。低血糖状態においてグルコース値は正常値以下である。

 

 視床下部は飢餓などの生物学的動因に重要な役割を果たしている。しかし、視床下部を刺激した場合、その完了行動は刺激依存的である。

 

<社会的動機>は獲得性の動機づけ状態で、実際のあるいは想像される社会的刺激によって喚起される。

 

<達成動機>

成功に対する一般的な接近傾向

<主題統覚検査 TAT>

 

成功に焦点をあわせる人は現実的な目標を選び、困難度が中程度の課題を好む傾向にある。失敗を回避しようとする人は、非現実的な目標を設定し、困難度の低い課題を選ぶ傾向にある。

 

<成功恐怖>

男女ともにある社会的、経済的、歴史的条件によって誘発される強烈な回避反応と考えられる。

 

雇い主は、労働者の生産性はお金や仕事に付随すること<環境衛生的誘因>を改善すれば上昇すると考えたが、仕事の内容が豊かで、やる気を出させ、労働者が責任を引き受けることができる労働からのみ生じる。

マグレガーのセオリーXとセオリーY

 

<内発的動機づけと外発的動機づけ>

 

<過度の正当化効果>

内発的動機づけによる労働が、報酬が与えられて外発的に動機づけられると、以前に喜んでいた労働が、報酬が取り去られた時に止まる。

 

愛、憎しみ、怒りのような情動体験は主観的で、心理学的、生理学的過程を含む<感情>状態である。情動には生得的要因と学習要因との両方は含まれる。

 

一時的な情動状態と安定した個人的な<特性>は区別される。

第3の情動が気分であり、状態よりも持続時間が長いが、個人の性格特性と全く同一ではない。

 

<情動のジェームズ-ランゲ説>

特異的な生理学的変化の結果として、人は異なる情動を体験する、という。しかし、情動の生理学的基盤として、非特異的喚起状態がある。

 

大脳辺縁系を刺激すると情動反応に変化をもたらす。

 

 

<情動の二要因説>

種々の情動の生理学的要素は、実は一つの分けることのできない喚起状態であり、これが情動の強度を決定する。

 

<情動の認知評価説>

 

<神経文化理論>

同じ情動が異なる文化で触発され、発現規定による妨害がなければ、同じ顔の表情が生起するだろう。

6つの基本的情動 幸福、悲しみ、怒り、恐れ、驚き、嫌悪

――生理学と知覚――

人の神経系は、

中枢神経系(CNS) (脳と脊髄)

末梢神経系     (受容器細胞と効果器細胞と中枢神経とを結合する神経線維)

に分けられる。

<ニューロン> 神経系のどの細胞もニューロンという。(細胞体、樹状突起、軸策、終末ボタン)

 

<反射弓> 感覚入力→中枢神経系→行動上の出力

 

<シナプス伝達> 終末ボタンがその周囲の神経回路網に情報を伝達する。

 

ニューロンの<神経インパルス(活動電位)> 全か無かの法則に従う。

 

<ミエリン鞘> グリア細胞でできている。絶縁体の機能とインパルス伝導を促進する。

 

シナプス伝達と神経伝達物質

 

ゲシュタルト心理学 <図と地>

 

地(背景)に対するものとして図を見ようとする。

 

<プレグナンツの法則>

いくつものまとまりの知覚が可能な視覚刺激の知覚において、最も簡潔で秩序ある形を知覚する傾向がある。ウェルトハイマー

 

奥行知覚

 

 大気遠近法 線遠近法 肌理の匂配 陰影 相対的位置 既知の基準

 輻輳 網膜視差

 

聴空間知覚

 

1500ヘルツ以上では音源から遠い耳は影になる。1500ヘルツ以下では頭によって遮断されずにある高圧波と次の高圧波との距離(波長)が長くなるにつれて音の周波数は低くなる。1000ヘルツ以下の音の波長は頭を横切る距離よりも長くなる。一方の耳では高圧波もう一方の耳では低圧波が入る。これが刺激の持つ位相の差であり音源定位の手がかりになる。

 

<注意>=知覚の方向 

 

変化しない側面の認知 エレノア・ギブソン 

 

――パーソナリティ――

パーソナリティとは、相対的に状況や時間を通じて一貫した仕方で行動パターン(顕在的および潜在的の両方の)の特性に影響を与える個人の独自な心理的特性の総合である。

 

一般に広い範囲で正常で平均的だとみなされる個人についての研究であり、その人の行動が状況的に適切であるか否かを確認して正常性を決定する。

 

<法則定立的接近>

パーソナリティにおける一つの基本的構造が存在すると仮定する。

ルイス・ターマンによる天才児の研究

 

<個性記述的接近>

一貫性は多くの状況にわたって個人の内部に存在し、個人を特徴づけ、個人に関連する特性は、その個人自身の現象学的支店にそって研究されるべきだ。

G.オルポート

 

<4つの論理的アプローチ  特性理論、精神力動的理論、人間学的理論、学習理論>

 

<類型論と特性論>

類型論では、個人の行動を単純ではっきりと観察可能な特性に結び付け、非連続的なカテゴリーを仮定する。それにたいして、特性論での特性は、個人が他者と異なる区分が可能で個人がそれぞれに他者と異なる仕方で相対的に持続している。

 

各種のパーソナリティ理論

 

<精神力動的理論>

 

 心的決定論

心的障害の生育史の影響など

 

 発生論的起源

幼児期の体験が成人の多くの側面に影響する。

 

 生物社会学的本能論

性と攻撃性の重視

 

 無意識過程

潜在的な心的内容

 

 目的志向的動機力学

 

<人間学的理論>

 

カール・ロジャース

 個人の現象的場が優先され、自己実現が強調される。

 積極的尊重

 不一致

 <自己>

チャールズ・クーリー 鏡に映った自己

G・H,ミード 自我同一性は退社が我々に対して持っている志向を統合することから発達する。

ウイリアム・ジェームス 物質的自己  社会的自己  精神的自己

 

アブラハム・マズロー

 自己実現

 欠如動機と成長動機

 欲求階層

  生理的欲求→安全→愛情と所属→尊重→自己実現→超越

 

<学習理論>

 B・F,スキナー 特別な強化の歴史としての顕在的・潜在的な反応システムの総計。きまぐれとはまだ原因を見つけていない行動への別名でしかない。

 機能的分析

 

ジョン・ダラードとニール・ミラー

緊張解消と初期学習の2点を強調し、精神力動的理論と和解させた。

 

アルバート・バンデューラーとウォルター・シュミット

社会的学習理論 行動パターンを獲得・維持する認知過程の重視 

心理的機能とは行動とそれを制御する条件の間の持続的相互作用

 他者を介しての間接体験的な学習 自己制御が可能

 

――パーソナリティの評価――

 

<評価>とは、ある特性を基礎として個人を価値付けたり区別したりするために、特定の検査手続きを使用することである。

 

<信頼性、妥当性、標準化>

 

<構造化面接> あらかじめ決められた質問と順序

              <ハロー効果>や<ステレオタイプ>に注意

 

<行動抽出法(行動観察)>

 

<質問紙検査>

 被験者が自分自身に関する情報を直接に提供する方法

 

YG性格検査 エゴグラム 

 

<投影法検査>

一組の曖昧で中性的な標準刺激に個人的意味を投影させる。

   ロールシャッハ・テスト TAT SCT

 

描画法検査

 

HTP 風景構成法

 

<作業検査法>

 内田クレペリン精神検査

 

――知能の評価――

 

<MA 精神年齢> <CA 暦年齢>  <IQ 知能指数>

アルフレッド・ビネー テオフィール・シモン

 

スタンフォード-ビネー検査

  ルイス・ターマン

 

→ ウェクスラー児童用知能尺度(WISC) ウェクスラー成人用知能尺度 (WAIS)

 

言語 (一般的知識 理解 単語 単語間の類似 算数 数唱)

 

作業 (積木模様 絵画配列 迷路(WISCのみ) 絵画完成 ものの組み合わせ)

 

知能検査で分かるのは、顕在IQであって元型知能ではない。

検査作成者は自分が属する文化から価値や態度、情報を受け取っているわけで、それと被験者の社会文化的な背景とは矛盾するかもしれない。

 

IQの予測要因は、家族の社会経済的な地位と母親の教育水準。女子は男子より高いIQを示し、白人が黒人より高い。

 

低める要因は、大家族、後から生まれ同胞と年齢が近い、など。(貧しい人々、少数民族)

 

知能の定義「IQ検査によって測定されたもの」

 

子供時代のIQは成人のIQのよい予測要因である。

 しかし、職業上での成功は予測しない。

 

IQにより、個人の知能の全般的総合的水準を知れる。

 「一般的知能」とは基本的能力(言語、数、知覚、空間、推理)の集合である。

 遂行上の欠落を明らかにし、学習過程(符号化の方略、再生過程)を分析し、遂行能力を改善する。

 

<創造性>は、まれなあるいは普通ではないが、適切な反応が生起されること。

敏感な感受性、内的表象、統合能力、内発的動機付けに伴う認知的自由という側面

 

創造的な人間は独立性が高く、女性的な面を受容し、複雑さへの認知的好みがある。心が無意識の言語以前の遊びの要素の多い思考水準まで退行できた時に生じる。同時に適切に問題を建設的に解決するために人並み優れた自我の強さが必要となる。

 

――行動の発達的基礎――

発達心理学は、一生の間の行動変化の記述・説明・変容、そしてこれらの変化の個人差を扱う。

これらの変化は<身体的成長・成熟・学習>の言葉で説明される。

 

発達を引きおこす要因は、遺伝的なものと環境的なもの。遺伝対環境という考えかたは実りがない。

 

発達段階の概念は、強い意味では、発達の不連続性、ある時期から他の時期への質的変化を示す。

 

胎児期   (受胎から出生まで)

乳児期   (出生から18ヶ月まで)

児童期前期 (18ヶ月から6歳まで)

児童期後期 (6歳から13歳まで)

青年期   (13歳から20歳まで)

若青年期  (20歳から45歳まで)

中年期   (45歳から65歳まで)

老年期   (死まで)

 

発達研究で用いられる方法

  横断的方法

 

  縦断的方法

 

  系列的方法

 

生物的変化と生理的変化

  栄養不良は、それが長引いたり重大なものであったり、急速な成長期にあたると、永続的な心身の遅滞を引き起こすことがある。

 胎児期から100歳まで女子のほうが生存率が高い。男子の方が情緒、学力、行動の問題を起こしやすい。

 

――認知的変化と知的変化――

認知や知能は、環境への適応の心理過程のことを指している。

 

初期に学習された能力は、新しい学習状況に転移し、その学習を促進する。

(5歳時) IQ120=(6÷5)×100 ⇒  (10歳時) IQ120=(12÷10)×100 

 

<遺伝係数>

 

遺伝的な影響を量的に評価しても大まかで、環境要因は量的に測定できない。

遺伝と環境の比率を問うなら両者の変動範囲は一つと見ることになる。

総体IQが同じでもパターンが異なる。(男女の能力特異点の差が80%遺伝とは思えない)

実践的ではない。(訓練や環境調整することが重要)

 

<ピアジェ>の認知発達理論

 

心理的操作である<シェム> 心的イメージである<シェマ>

思考することのうちに、<同化>と<調整>が含まれる。

<同化>は、理解を生じ、<調整>は発見過程である。

 

これらシェムとシェマを体制化し特徴的な思考形態を生み出す。

 

<感覚運動期>

 

<前操作期>

 

<具体的操作期>

 

<形式的操作期>

 

発達とは、

  1. 環境からの目新しい挑戦的な情報と子供の既存の認知構造が相対するとき生ずる認知的挑戦の関数
  2. 人間知性は内容と構造の内的で自己誘導的な再体制化と統合化の連続的過程である。

 

――社会的過程とパーソナリティ過程――

 

<フロイト・エリクソン・サリバン>

フロイト

 口唇期、肛門期、男根期、潜在期、性機器 

 

エリクソン

 信頼―不信     自律-疑惑    自発性―罪悪感   勤勉性―劣等感  同一性-同一性拡散

 

 親密性―孤独感   生殖性―自己耽溺   完全性―絶望

 

サリヴァン

多くの生理的欲求から生じる緊張が活動を引き起こすが、欲求は生物的ではなく、人々との相互作用から生じる。

力動 永続的・周期的行動パターン≒習慣的な反応 

<自己体系> 自分の安全に対する脅威を避けるのを学習して発達する。

人格イメージ だれか他者にもっているイメージ(感情、態度、概念を含む)→ 転移

ステレオタイプ 集団が共通して持つ人格イメージ

 

<情動の発達>

基本的情動やその表し方は、生まれつきのものであり、脳の原初構造に依存している。

新生児の情動 興奮・鎮静、不快・快

ワトソン 恐怖、怒り、愛情から新しい条件付けで情動が発達する。

 

<道徳の発達>

 

道徳発達は一定の決まった段階を経過する。

 

コールバーグの道徳発達

 三つのレベルと七つの段階。

 前慣習的レベル(児童期前期) 慣習的レベル(児童期後期、青年期、おそらく成人期も) 超慣習的・原理的レベル(この中でも特に高次の2段階はめったに出現しない)

 

 成人の道徳発達の特徴

  • 道徳性に関して自己中心的な考えが低くなる。
  • 段階4が固定化する。
  • 道徳判断と道徳的行動の一貫性が高くなる。
  • 道徳的構造を用いることとその考えを日常生活に応用していくことが統合される。

 


――
精神分析――

               錯誤行為

 

最初に意図された目的が達成されず、途中で本人の意識しないうちに他の行為にとって代えられる現象。

 

錯誤行為が生じる条件

1.疲れているとき  2.興奮しているとき  3.他のことに心を奪われているとき

これだけでは説明できないものもある。

 

メリンガーとマイヤーの説

精神的に高い価値を持った言葉が神経支配をかき乱す。(前後倒置、前響、混交および代理)

 

独自の意味

開会を閉会と間違える意味。もしかしたらそれ自身の目標をもつまともな心的行為ではないだろうか?

 

含む意図

錯誤行為の生じる事情を検討して明らかにしよう。

  1. 意図したこととは反対のことが現れるとき
  2. 正反対の言葉ではなくて、対立する意味が表現されるとき
  3. 単純に他の意味が付け加えられるとき
  4. 意味不明のいい間違いなど

 

妨害する意図の確認、解釈の手がかり

推察する、話し手に尋ねる(連想から連想の核へ)当事者が否定する場合(強い抵抗)

 

紛失や置忘れの動機、前兆としての錯誤行為

 

二つの意向の関係

「妨害される意向」と「妨害する意向」の関係

第一に、両者に内容上関連性を持つ場合。第二に、内容上は関連性を認められないが、少し前に当人の心を奪っていた思考過程に由来する。

 

妨害する意向の種類と錯誤行為にメカニズム

妨害する意向の3つのグループ

1.「妨害する意向」があらかじめ当人にわかっている。

2.「妨害する意向」を認めるが、直前にそのような意向が心の中にあったとは気づかない。

3.「妨害する意向」を解釈されると当人は頑強に否定する。

→「妨害する意向」の意識からの追放(抑圧)

 

反対意思の多義性

反対意思は意識の外部に排除されていて、錯誤行為を通してようやくその目的を達成する。

直接的反対意思と間接的反対意思

 

無意識の仮定

人間の心には、本人の自覚しないままに活動しているいろいろな意向や願望がある。

 

錯誤行為の究極的動機

あることが不快感と結びついている場合には、それを想起するとこの不快感が新たによみがえってくるので、その想起を嫌悪する気持ちが働き、不快を回避しようとする意図によって想起が困難となる。

→快感原則

 

――夢――

日常的に経験する非合理的な現象。意識では統制されない経験。<顕在夢>と<潜在夢>

1. 睡眠と覚醒の中間状態 2.通常視覚像として体験される。

 

夢の誘引は、

外的刺激を睡眠中に加えることで得られる刺激夢

内臓刺激の作用と推測される夢 日常生活の反復の夢   など・・・・夢は刺激を単に反映するのだけではなく、それを加工し、暗示し、ある関連の中にはめ込み、ある他のものによって置き換える。

 

夢の研究に当たっての前提

1.夢は身体現象ではなく精神現象である。2.人間には自分がそれと知っているとは知らずに知っている心的事象がある。

思いつきは、強い感情を伴った思考と関心の範囲、すなわちコンプレックスによって拘束されている。

 

夢の解明のための連想法

「なぜそのような夢を見るようになったのか?」最初の答えを夢の解明とみなす。思いつきも心的決定論

自由連想をさせる

「夢とは全体として他のある物、すなわち無意識的なものに対する歪曲された代理物であり、その無意識的なものを見出すのが夢解釈の課題である」

 

解釈作業中の守るべき原則

それが意味しているように思われるものは気にかけない。

代理表象を呼び起こすことだけに作業をとどめ、あれこれ詮索しない。

無意識的なものが自分から姿を現してくるまで気長に待つ。

 

解釈に対する抵抗

抵抗が大きいほど無意識的なものの歪曲は大きい。

思いついたことは残らず話さねばならない、という規則を

 

顕在夢と潜在夢との間の4つの関係

全体の中の一部、ほのめかしの関係、形象化の関係、象徴関係

 

ある婦人は、子供のころに、「神様が紙のとんがり帽子をかぶっている夢」をたびたび見た。「とんがり帽子」について婦人が語ったところによれば、この婦人は子供のころ、食卓につく際にいつもこのような帽子をかぶらされたが、それは誰かが自分よりたくさんの食物をもらっていないかと、きょうだいの皿を盗み見る癖がやめられなかったからだった。つまりこの帽子に馬車馬の目隠しのような役割をさせようとしたのだ。この夢全体の解釈は、さらにこの婦人の頭に浮かんだ連想の助けにより容易に明らかとなる。「神様は全知全能で何でも見抜いらっしゃると聞いておりましたので、皆は私の邪魔をしようと思っているけれども、私は神様と同じようになんでも知りなんでも見抜いているんだということをこの夢は意味しているとしか思えません」

 

小児の夢

歪曲がすくなく、短く、明瞭で、筋が通って、わかりやすくて、あいまいさがない。

1. 理解可能で十分根拠のある心的行為。願望のあからさまな充足

2. 妨害される意向は睡眠欲求であり、妨害する意向は願望である。夢の機能は睡眠の保護である。

3. 願望充足と幻覚的体験

 

夢の検閲

承認しがたい無意識的願望に対する検閲活動の結果、象徴化の結果でもある。

検閲が客体化したものが解釈に対する抵抗となる。

象徴的表現

夢の要素とその翻訳との一定不変の関係を象徴関係という。象徴表現は夢において性的対象や関係を表すのに用いられることが多い。

夢の作業

1.圧縮  1潜在的な要素が総じて省略される。2潜在夢の幾多のコンプレックスのうち、わずかのものしか顕在夢の中に移行しないこと 3共通点のある潜在的な要素同士が顕在夢に対して融合されて一つになること

2.移動  縁遠いものに「ほのめかし」によって代理される。心的アクセントがある重要な要素から他の重要でない要素に移されるために夢の中心点が変わって異様に見る。

4. 視覚像への退行的置き換え

5. 2次加工 全体として調和の取れたもに体裁を整える。

 

夢の太古的特徴と幼児性

系統発生の原初時代、個体の原初時代

象徴関係と幼児健忘が夢の源

 

幻覚的体験に置き換え、睡眠を妨害する願望を充足させることで取り除こうとする。 歪曲された夢の場合は、抑圧された願望の仮装された充足と言ってよい。

 

願望充足を作り出すのに不成功だった場合、夢の思考の中の苦痛感の一部が健在夢に出てくることがある。悪しき願望が検閲を圧倒する状態になると、検閲の代わりに不安を生じさせ、睡眠を中断させる。不安夢は抑圧された願望の公然たる充足なのである。

 

ある男性が次のような夢を見た。「彼は二人の人と一緒に―――その名前は夢の中では知っていたのだが、目が覚めると忘れてしまっていた――非常に高い急な鉄の橋を渡っている。突然二人の姿が消えて、帽子をかぶりリンネルの着物を着た幽霊のような男が見える。彼はその男に、お前は電報配達人かと尋ねる。・・・・いや違う。それでは御者か?違う。そこで彼はまた歩き続けていく」。彼は夢の中でもすでに大きな不安を感じていたが、目が覚めた後も空想の中で夢の続きを思い描いていくと、鉄の橋が突然崩れ、身が墜落するさまが思い浮かぶ。

未知の人だ、名前は忘れてしまったと強調される人物は、たいてい身近な人である。この夢を見た人には二人の兄弟があるが、万一にもこの二人の死を願ったものとすれば、その罰として死の不安に悩まされても当然だろう。彼は電報配達人について、こういう連中はいつも凶報をもたらすものだと述べている。また、それは制服から見ると点灯夫であったかもしれない、点灯夫は、火をつけると同時にまた、死神が生命の灯火を消すように街灯を消して歩くものだとも述べている。

 

「昼の残り物」日中残滓物 と無意識的願望     企業家と資本家

「無意識的」と「無意識」

 

―― 分析心理学(ユング) ――

 

  • 無意識の補償作用
  • 集合的無意識
  • 対極性を持った概念のあり方の間のダイナミックな動き
  • 人間の心の中心を自我ではなく、自己に置く。
  • 心の全体性とバランスの回復を目標の一つに置く。

 

<コンプレックス> 感情に色づけされた心的複合

 

<タイプ論>

心の働きを、思考、感情、直感、感覚の4つに分ける。心のエネルギーの向きを内向、外向と分ける。

 

<元型論>

元型「人間の深層から生み出される、人類共通のイメージパターン」

外界の事物に投影されることで意識される(象徴)。

象徴的洞察・感情的洞察

プシコイド 身体的プロセスと心的プロセスが分かちがたく一体化している。

 

意識とコンプレックス

コンプレックス 「複合的な色彩を帯びた感情」「特異な、どちらかといえば苦痛の感情的色相をもっていて、通常は視野から遮られているような事態におかれている、心的内容物の塊である」意識と無意識の水面下に浮かぶ標識灯

 

コンプレックスの発見

 

言語連想実験 連想が障害を受けることで、初めてその背後にある無意識を意識化することができ、そこにうごめく心の実体を知り、かつ無意識のたくらみを知ることができるのである。

 

コンプレックスの発現

意識を揺さぶる。反動形成や合理化などの自我防衛機制が多くみられる。

 

コンプレックスによる影響

われわれに取り付いて、われわれの心を支配し、独立した人格のごとく振舞うことがある。日常会話の中で「今日は自分自身じゃない」「今、彼女はどうなっちゃってるの?」「彼は気が狂うほど怒っている」

 

コンプレックスの元型的な根

「父親コンプレックス」永遠の人間のテーマを再演している。人間の本質を生きようとしている。若者の厳しい試練、年老いた暴君と戦う神話上の若き英雄

 

自立性と擬人化

自我意識から分離させられているがゆえに、コンプレックスがそれ自体意識を持っているかのごとく、人格化された容で出現することがある。

 

コンプレックスの建設的機能

「コンプレックスは無意識の内容を意識に上らせて、意識の創造的な力を打ち立てるような、そのような根源的な機能を有しており、このような観点からすれば、コンプレックスは起こってはならないものではない。むしろそれは、心の成長に力を与えるものである。意識が成長するうえで「成長痛」を伴うことは避けられないことなのである」

 

補償

心的構造論における各構造間の調整を営む無意識的機能、つまり心的器官の自己調節作用として、必然的に起こるもの。意識と無意識の相補関係によって全体的な均衡・調和を保つものと考え、意識の態度があまりにも一面的になる時、それを相補う動きが無意識に存在することを強調した。

無意識の補償作用が夢を通して行われる。神経症は無意識があまりに意識を支配してしまったため、補償作用が円滑に機能しなくなった状態。

 

集合的無意識

普遍的無意識 集合無意識 「表象可能性の遺産として、個人的ではなく、人類に、むしろ動物にさえ普遍的なもので、個人の心の真の基礎である」「一つの個体だけに特有なのではなくて、同時に多くの個体、つまり一つの社会なり、民族なり、あるいは人類全体の特色をなしているような心的内容のことである」

内容は元型からなる。「それ自体は内容のない形式的な要素であり、<前もって型式を与える可能性>、ア・プリオリに与えられている表象型の可能性」であり、「元型そのものの存在は、本能そのものの存在と同様、具体的に働かない限りは確認することができない」

象徴は集合的無意識と深いかかわりを持つ。対立するものを統合しており、無意識から意識にのぼった形象。

 

治療の実際

対面式で週に1,2回。自由連想は行わず、夢分析などを導入することもある。

➀ コンプレックスや影の「自我への統合」

他者の投影していた自分や行動化していた自分を自覚する。

 

  • 大母からの離脱

実際の母親、元型としての母親イメージからも適切な距離を取る。

 

  • 対極的な要素の分化と統合

対極的な要素の区別、整理、洗練を通して分化する。

 

  • 個性化

「その人が、よりその人らしくなっていくプロセス」

 

―― ロジャースの人間理解と治療論 ――

 

カール・ロジャースRogers,C.R.は、農学→牧師→臨床心理学と進み、精神分析や行動療法への疑問が高まり、来談者中心療法、人間中心療法を編み出した。

 

<ロジャースの人間理解>

「人生は、最良の状態では流動的で、変化し続けるプロセスであり、制止しているものは一つもない」

「長い経験を通して学んだことは、人間は基本的にポジティブな方向性を持っている」

→ 人間性、人間は本来持っている健康な力への信頼。

 

<ロジャースの心理的援助とは>

 

  • カウンセラーの一致性と純粋性

クライエントの成長を促進するのは、カウンセラーが自らの態度や感情に気づいていることである。益がないのは受容的に振舞うことである。

 

  • 無条件の肯定的配慮

クライエントに肯定的な態度を取ること、クライエントを尊重し、受容し、信頼することである。

 

  • 共感

共感とは、クライエントの観点から理解することである。すなわり、内部的照合枠をカウンセラーがクライエントになったかのように、感情移入的に理解することである。

 

「いまここ」here and nowの重視。過去の生活暦や病理的側面のアセスメントはそれほど重要ではない。

病理の重視はクライエント理解に害となり、専門性を強調することは人間を客観視してしまう。

 

<ロジャース理論の発展>

ベトナム戦争の敗退の影響から人間性の回復を望む声からロジャース理論が求められ、個人のカウンセリングから<エンカウンター・グループ>と呼ばれる体験を重視するようになる。

さらに、ロジャース理論はカウンセラーの直感と霊的次元へと進んだ。

しかし、安易なカウンセリングの大衆化をもたらした面もある。また、カウンセラーのアセスメント力の低下と、カウンセリングの危険性についての理解の欠如などが指摘されてきた。

 

―― 社会心理学 ――

集団の過程や構造、そして人々がお互いに対して及ぼす影響についての学問。

社会規範は、権威構造に従って集団成員の役割を分配する。

規範は、期待の拡散と結晶化を通して、集団の中に現出する。

 

人々は集団の支配的な規範的価値と一致するように振る舞う時、集団の文化の中へ社会化されたということができる。

 

同調への圧力

 

賞罰は同調に随伴するところの報償と罰である。

少数派が一貫した立場、強いコメットメント、自律性の様相を提示することができる時には、規範は少数派によって変更されることがある。

 

集団間の葛藤は、内集団における凝集性の高い友情や共有された現実の感覚が、しばしば他者に外集団の成員というラベルをはることを伴うために生じる。

偏見は、ある集団のメンバーに対して、偏った仕方で反応する内的状態もしくは心理的構えである。差別は、偏見が生じさせるであろう行動である。差別の犠牲者は、正当性の否認と文化勢力構造からの孤立を経験するであろう。

 

宣伝 プロパガンダ と説得は、ある条件が満たされた時には強制的なものとなる。

 

態度とは、人や集団に対してなんらかの一貫したやり方で反応しようとする、比較的安定した、情動的色彩を帯びた先有傾向である。態度の成分は、信念と感情と行為である。情報、モデルの観察、および賞と罰に基づいて形成される。

 

認知的不協和の理論によれば、人々は不協和の状態にある時、つまり彼らが心理的に不整合な2つの認知に同時に直面している時、自分の態度かまたは行動を変化させたり、新しい認知を追加したりするだろう。これらの変化によってより大きな協和を達成しようと動機づけられている。

 

個人は、社会的な諸力の効果を過小評価し、それらに抵抗する自分たちの個人的な力を過大評価する範囲で、社会的影響の試みに動かされやすい。我々は不当に大きな力を属性的要因に帰属する傾向があり、状況的な諸力のもつ影響力を十分に認識しない。この自己中心的な力への志向は帰属の誤りと呼ばれている。

 

攻撃とは、傷つけたり破壊したりする意図を伴った、身体的または言語的な行動である。

 

フロイトは生得的な成分として攻撃にアプローチ。エロス タナトス カタルシス

 

比較行動学者たちは、人間の攻撃性を他の動物の攻撃行動と同じく、本能的であると理論化している。だが人間の場合はどういうわけか攻撃行動を抑制する本能を失ってしまっている。

攻撃はなわばり習性の生得的感覚から生じると考えられている。

 

攻撃の生理的基盤、特に視床下部と扁桃核は攻撃行動と関連があるとされている。抑制不全症候群では大脳辺縁系や頭頂部の疾患が時おり発見される。

 

フラストレーション攻撃仮説 

しばしば自分の本来の標的に向けられない時に他の人や対象(スケープ・ゴート)に置き換えられる。

 

社会的学習理論 攻撃とは不快な経験あるいはまた予期される利益の結果であろう、とする。

攻撃的なモデル、両親やメディアは、子どもの攻撃行動を作り出す上で非常に大きな力を持つ。

カタルシスの考えを退け、むしろ攻撃的な感情を経験したり、他人に攻撃的に振る舞うのを見たりすることは、将来の攻撃の怒りやすさを減らすのではなく逆に増大させると主張する。

 

没個性化は、個人が自分自身の行動の監視を停止し、他人の評価にあまり関心をもたなくなる原因となる。

匿名性、拡散した責任、構造化されていない状況での喚起の状態、感覚的な荷重負荷、意識の変化した状態、非認知的なフィードバックへの依拠などがすべてこの状態の原因となる。

 

 

―― 好きになること、愛すること ――

 

近接 ― 好意の効果  身体的魅力  能力  相互好意  類似性 相補性

 

強化理論では我々が報償を受ける時存在している人々を好くようになり、罰を受ける時存在している人々を嫌うと示唆する。

 

交換理論では、相互作用することの報償はコストより大きいと感じ、心理的「利益」を得ていると感じるのでなければその相互作用は継続しないだろうと提案している。

 

公平理論では、相対的結果という点から定義される。インプット(投入)と比例している時、公平という。不公平があると、回復の試みがなされる。釣り合い理論は公平理論の一つだが、社会的価値の点で「釣り合う」相手を得ようと務めることを示唆する。

 

魅力の獲得―喪失理論によれば、われわれについての相手の人の評価の変化は、評価がずっと一定している場合以上に、その人に対する好意に大きな影響を持つであろう。

 

エーリッヒ・フロムは、愛情の5つの型を主張した。

兄弟愛、親の愛、性愛、自己愛、宗教愛

 

ラビンは、「愛情尺度」と「好意尺度」とを作った。

 

「恋に落ちる」という経験は、生理的喚起と性的興奮の存在によるのかもしれない。情動の二要因説は、どんな種類の生理的喚起であれ、適当な認知が存在すれば、恋愛と解釈されうることを示している。

 

愛情の恐怖低減モデルは、負の喚起を低減する人びとを愛すると示唆する。愛に落ちるのは負の強化の結果であるかもしれない。

 

関係が成熟し長期的になると、恋愛は情愛となり、信頼が関係の鍵となる。

社会的浸透の理論は、信頼を相互にかわされる単純な自己開示の始まりと見ている。

相補性の要求のアプローチは、その要求が我々のそれとは相補的であって、われわれの要求を充足させることのできる人を探し求めるものとして、その過程をみるのである。刺激―価値―役割理論は、最初の刺激または魅力の段階、価値や態度が類似していることが見いだされる価値の段階、そして各人が、その関係の中におけるその役割を満足すべきものと思う役割の段階という一連の系列を提唱するのである。

 

マスターズとジョンソンは、男性と女性の性的反応は生理的には非常に類似しているという。それは、興奮、高原、オルガズム、解消である。

性的不能と不感症は、主として心理的問題の結果であり、効果的に治療できると説明する。

 

自己性愛、同性愛、異性愛

 

人間は、文化から性的スクリプトを獲得する。彼らの性的動因は、社会的規範、個人的期待、好まれる行動の系列、などと結合している高次の知識と結びつけられている。スクリプトは変わりうる。かつては不道徳とされたものが、場合によっては日常事となるかもしれない。

 

 

 

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